菌根
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菌根(きんこん、英: mycorrhiza[注 1])は、維管束植物の根に菌類が侵入し、定着、共生して形成された構造である(図1)。菌根を構成する菌類は、菌根菌とよばれる[2][3]。ほとんどの維管束植物は菌根を形成し、また根をもたないコケ植物にもしばしば同様の共生関係が見られる。菌根は19世紀になって認識されるようになり、ドイツのアルバート・ベルンハルト・フランクによってギリシア語の菌(mykes)と根(rhiza)から菌根(ドイツ語: mykorrhiza)と名付けられた[4][3]。また20世紀中頃には、この共生が植物に利益を与えるものであることが明らかとなった[5]。
菌根は、その構造や宿主・菌根菌の分類群に応じてアーバスキュラー菌根や外生菌根、ツツジ型菌根、ラン型菌根などいくつかの型に類別されている(図1)。一般的に菌根において植物と菌根菌は相利共生関係にあり、植物から菌根菌へは光合成でつくられた有機物(糖など)が供給され、菌根菌から植物へは土壌から吸収した窒素やリンなどの無機栄養分や水が供給される。また、菌根菌によって、病原菌からの保護、重金属などのストレスに対する耐性が植物に付与されることもある。一方で植物が光合成をせず、炭素源を含むほとんどの栄養を菌根菌に依存していることもあり(植物が菌に寄生または片利共生)、このような植物は菌従属栄養植物(腐生植物)とよばれる。また、同一環境に生育する植物はしばしば菌根菌を介してつながっており(菌根菌ネットワーク)、さまざまな物質が輸送されている。古生代デボン紀の陸上植物の大型化石からは、既に現生の菌根に似た構造が見つかっており、陸上植物の誕生・進化には菌根の存在が重要であったことを示唆している。