スペードの女王
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この項目では、アレクサンドル・プーシキンの短編小説について説明しています。その他の用法については「スペードの女王 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
『スペードの女王』(スペードのじょおう、ロシア語:Пиковая дама)は、ロシアの作家アレクサンドル・プーシキンの短編小説。1834年に雑誌「読書文庫」に発表され、すぐさま大変な人気を博した[n 1]。『大尉の娘』とも比せられるプーシキンの代表的な散文作品であり[n 2]、引き締まった文体とホフマンを思わせる幻想的な雰囲気に満ちた格調高い名作[3]。また1830年前後の[4]幻想と現実とが交差する都市ペテルブルクを舞台にした「ペテルブルクもの」に連なり[5]、長編小説『未成年』に〔スペードの女王の主人公〕「ゲルマンは巨大な人物だ。異常な、まったくペテルブルグ的な典型だ―ペテルブルグ時代の典型だ」という言葉がでてくるが、ドストエフスキーもこの作品を激賞したことで有名である[6]。
その平民出身の主人公ゲルマンは、大金を求めて人知の限りを尽くすが、愛と友情とを知らぬままナポレオンのごとき野望を持てあまし、二つの固着観念のせめぎあいのなかで(ヴィノグラードフ[7])ついには発狂して全てを失ってしまう。神西清はこの作品にプーシキン自身の内面とも通じ合う「悲劇」を見いだしている[8][n 3]。
1890年には本作を元にチャイコフスキーが同名のオペラを作曲している。また1916年(監督ヤーコフ・プロタザノフ)、1948年(監督:ソロルド・ディキンソン)には映画化もされた。日本では神西清による訳で知られ、宝塚歌劇団でも2度の舞台化がされている。