ヴィーナスと音楽奏者
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『ヴィーナスと音楽奏者』(ヴィーナスとおんがくそうしゃ、英: Venus and Musician) は、イタリア盛期ルネサンスのヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオと工房による一連の絵画の名称である。
スペイン語: Venus recreándose en la Música 英語: Venus with an Organist and a Dog | |
作者 | ティツィアーノ・ヴェチェッリオ |
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製作年 | 1550年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 136 cm × 220 cm (54 in × 87 in) |
所蔵 | プラド美術館、マドリード |
イタリア語: Venere e il suonatore di liuto 英語: Venus with a Lute-player | |
作者 | ティツィアーノ・ヴェチェッリオ |
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製作年 | 1555-1565年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 152 cm × 196.8 cm (60 in × 77.5 in) |
所蔵 | フィッツウィリアム美術館、ケンブリッジ |
ドイツ語: Venus mit dem Orgelspieler 英語: Venus with an Organist | |
作者 | ティツィアーノ・ヴェチェッリオ |
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製作年 | 1550年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 115 cm × 210 cm (45 in × 83 in) |
所蔵 | 絵画館 (ベルリン) |
ティツィアーノの工房は、多くの「ヴィーナスと音楽奏者」のヴァージョンを制作したが、それぞれは『ヴィーナスとオルガン奏者』、『ヴィーナスとリュート奏』など絵画の要素によってさまざまな別の題名で知られている[1]。大部分のヴァージョンには左側の小さなオルガンを弾いている男性がいるが、リュートが弾かれているものもある。ヴィーナスは枕元に小さな連れを伴っており、それはキューピッドの場合もあれば犬の場合もあり、絵画館 (ベルリン) の『ヴィーナスと音楽奏者』のように両方が描かれている場合もある[2]。これらの絵画は1540年以降の制作であると考えられている。
多くのティツィアーノの絵画にはいくつかのヴァージョンがあり、とりわけ裸体の神話主題の絵画がそうである。後のヴァージョンは大部分、または全体がティツィアーノの工房による傾向があり、彼の個人的関与は不確かで、主題には異なる見解がある。すべての『ヴィーナスと音楽奏者』のヴァージョンはキャンバス上に油彩で描かれているが、2種類のプロポーションと大きさのものに分類され、オルガン奏者を描いたヴァージョンのうち2点は幅が大きい[3]。
5点のヴァージョンは、一般的に少なくとも大部分はティツィアーノによるものとみなされている。それらは、オルガン奏者の描かれているプラド美術館 (マドリード) にある『ヴィーナスとオルガン奏者と犬』と『ヴィーナスとオルガン奏者とキューピッド』、絵画館 (ベルリン) にある『ヴィーナスと音楽奏者』、そして、リュート奏者の描かれている『ヴィーナスとキューピッドとリュート奏者』 (フィッツウィリアム美術館、ケンブリッジ) と『ヴィーナスとキューピッドとリュート奏者』(メトロポリタン美術館、ニューヨーク) である[4]。ウフィツィ美術館 (フィレンツェ) にある別のヴァージョンはそれほど高く評価されていない。この作品に音楽奏者は不在であるが、キューピッドがおり、ベッドの足元の白色と黒色の犬が欄干の上にいるヤマウズラを見ている[5]。
すべてのヴァージョンで、ヴィーナスのベッドはロッジアに、あるいは低い石壁か欄干上の大きな開けた窓に設えられているように見える。ヴィーナスは全身像で表され、枕の上に身体を曲げて横たわっている。音楽奏者は彼女に背を向けてベッドの端に腰かけているが、振り向いて彼女の方を向いている。対照的に、彼女は右側の方を向いている。オルガン奏者は当時の16世紀の服を纏い (背後の風景にいる小さな人物たちも同様である) 、腰に剣または短剣を差している。大きな赤い布が画面上部左側を占めているが、より小さなヴァージョンでは上部右側を占めている。外には広い風景が広がっており、それは2種類に大別される。プラド美術館の2点のヴァージョンにおいては木々のある道と、宮殿の庭園のように見えるところに泉がある。他のヴァージョンにおいてはもっと開けた風景があり、それは遠くの山々にまで続いている[6]。