利用者:ProfessorPine/sandbox8
ウィキペディア フリーな encyclopedia
天文学におけるハビタブルゾーン[1][2](英語: Habitable zone、略称: HZ)とは、地球と似た生命が存在できる宇宙空間を指し[1]、日本語では生命居住可能領域[1][3]や生存可能圏[1]、生存可能領域[4]とも呼ばれる。一般的にハビタブルゾーンという用語は惑星系のハビタブルゾーン(英語: Circumstellar habitable zone、略称: CHZ)を指すことが多く、具体的には惑星の表面上に適度な温度、気体の酸素、そして液体の水の3点があることが生命居住の条件となる[5][注 1]。つまり水が蒸発したり凍結しないよう、放射エネルギーを発する恒星(太陽など)から適度な距離に惑星が位置していること、そして受け取ったエネルギー(温度)を逃がさぬよう、惑星に十分な大気圧があって温室効果が得られることがハビタブルゾーンには不可欠となる[6][7]。1953年、米国の天文学者ハーロー・シャプレーによってハビタブルゾーンの概念が初めて提唱されたが[8]、当初からその定義・基準を巡って疑問が呈され続けられており、いまだ発展途上の理論でもある[9]。
ハビタブルゾーンの改訳:英語版 Circumstellar habitable zone 14:37, 19 December 2019 (UTC) (oldid=931543450) と 日本語版 ハビタブルゾーン 2020年1月9日 (木) 09:39 (UTC) (oldid=75696764) をマージして改訳作業中。英語版著作権侵害の玉突き事故処理済バージョン。 |
さらに、太陽系外でも惑星などの周りを公転する衛星には惑星と同規模のものも多数存在し、これら衛星が太陽系の惑星数を上回る形でハビタブルゾーン内に点在しうることから、惑星ではなく衛星の居住可能性(英語版)に着目する専門家もいる[10]。また、銀河系のハビタブルゾーン(英語: Galactic habitable zone、略称: GHZ)や[11]、ブラックホールのハビタブルゾーンなど[12][13]、惑星系以外のハビタブルゾーンの理論も提唱されており[14]、本項で併せて解説する。
ハビタブルゾーンは時にゴルディロックスゾーン(英語: Goldilocks zone、略称: GZ)とも呼ばれ[15]、これは童話『3びきのくま』に由来する。少女ゴルディロックは寒暖や大小など極端なものを避け、ちょうどいい中庸を選ぶ性格であることから、ゴルディロックスゾーンという用語は単に生命体が存在しうるだけでなく、進化が起きるのにも適した領域(狭義のハビタブルゾーン)を指す場合もある[2]。つまり、地球上の生物に似た地球外生命体、そして地球外知的生命体が存在する可能性がある宇宙領域である。
こうした理論に基づいて観測が進められ、恒星の周りを公転する惑星がハビタブルゾーン内に存在するケースが多数確認されており、その一部には複数の惑星が公転している惑星系も含まれる[16]。特に地球よりも大きな惑星であるスーパー・アースや巨大ガス惑星は発見が容易なことから、ハビタブルゾーン内で観測されやすい傾向にある。また惑星系以外の研究も進んでおり、2013年11月4日、太陽系外惑星探査望遠鏡ケプラーの観測データに基づく共著論文が『米国科学アカデミー紀要』上で発表された。これによると、銀河系に存在する太陽に似た恒星や赤色矮星の周りを公転し、かつハビタブルゾーン内に位置する地球規模の惑星の数は400億個に上ると推定され[17][18]、これらのうち、太陽に類似の恒星を公転する惑星数は最大で110億個に上ると試算されている[19][18]。また別の研究によれば、地球から最も近い距離にあるとされる太陽系外惑星のプロキシマ・ケンタウリb(地球からケンタウルス座の方向に約4.2光年(約1.3パーセク)先)もハビタブルゾーン内に位置しており、主星である赤色矮星プロキシマ・ケンタウリの周りを公転している[20]。
地球外に液体の水が存在するとの実証結果を受け、今日ではハビタブルゾーンは惑星系の外部に大規模に広がっていると考えられている。地球を含む太陽系では、岩石圏(リソスフェア、いわゆる岩盤プレート)やその下層にあたるアセノスフェア内に大量の水が存在する。この事実から宇宙生物学では、恒星からの放射エネルギーを必要としない地下生物圏(英語版)の概念が通説となっている[21]。放射エネルギーの代替手段としては潮汐加熱(ちょうせきかねつ)[22][23]や放射性崩壊[24]などがあり、また大気以外の理由で気圧が加圧されたりすれば、自由浮遊惑星や太陽系外衛星であっても液体の水が存在する可能性がある[25]。液体の水は何らかの化合物を溶かすことで、沸点・凝固点や蒸気圧が変化することから(これを「束一的性質」と呼ぶ)、例えば地球上の海水中に含まれる塩化ナトリウム、火星の赤道上の塩化物や硫酸塩[26]、そしてアンモニア[27]などの溶液であれば、水が液体の形を維持する可能性が高まる。さらには、炭素や水を必要としない生化学 (alternative biochemistries) の仮説に基づくと、水以外の溶媒が液体の状態で存在さえすれば、水なしでも地球外生命体が生存しうる。この説に立脚すると、ハビタブルゾーンの範囲は従来よりもより広範となる[2][28]。