ロジスティック写像
カオス的振る舞いを示す単純な2次式写像 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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ロジスティック写像(ロジスティックしゃぞう、英語: logistic map)とは、xn+1 = axn(1 − xn) という2次関数の差分方程式(漸化式)で定められた離散力学系である。単純な2次関数の式でありながら、驚くような複雑な振る舞いを生み出すことで知られる。ロジスティックマップ[1][2][3]や離散型ロジスティック方程式(英語: discrete logistic equation)[4][5][6]、単に2次写像族[7][8]や2次関数族[9][10]とも呼ばれる。
ロジスティック写像の a はパラメータと呼ばれる定数、x が変数で、適当に a の値を決め、最初の x0 を決めて計算すると、x0, x1, x2, … という数列が得られる。この数列を力学系分野では軌道と呼び、軌道は a にどのような値を与えるかによって変化する。パラメータ a を変化させると、ロジスティック写像の軌道は、一つの値へ落ち着いたり、いくつかの値を周期的に繰り返したり、カオスと呼ばれる非周期的変動を示したりと様々に変化する。
ロジスティック写像を生物の個体数を表すモデルとして見る立場からは、変数 xn は1世代目、2世代目…というように世代ごとに表した個体数を意味しており、ロジスティック写像とは現在の個体数 xn から次の世代の個体数 xn+1 を計算する式である。生物個体数モデルとしてのロジスティック写像は、ある生物の個体数がある環境中に生息し、さらにその環境と外部との間で個体の移出入がないような状況を想定しており、xn は正確には個体数そのものではなく、その環境中に存在できる最大個体数に対する割合を意味する。微分方程式で個体数をモデリングするロジスティック方程式の離散化からもロジスティック写像は導出でき、「ロジスティック写像」という名もそのことに由来する。
2次関数の力学系としての研究は20世紀初頭からあったが、1970年代、特に数理生物学者ロバート・メイの研究によってロジスティック写像は広く知られるようになった。メイ以外にも、スタニスワフ・ウラムとジョン・フォン・ノイマン、ペッカ・ミュルバーク(フィンランド語版)、オレクサンドル・シャルコフスキー(ウクライナ語版)、ニコラス・メトロポリス(英語版)ら、ミッチェル・ファイゲンバウムなどがロジスティック写像の振る舞い解明に関わる仕事を成している。